DX(Developer Experienceではなく、Digital Transformationの方)が叫ばれるようになって、はや数年。「DX人材」と呼ばれる人種がどの企業にも求められていますが、一体何ができればいいのか、何がキーになるスキルなのか、ぼくなりに考えてることをまとめてみました。

DXとはクリエイティブな仕事である

DX人材に求められるのは、Product Manager / Engineering Manager / Project Managerの3つの役割全てだと思っています。

1つのプロダクトにおける体制イメージ

影響を受けた考え方として、ビジョナルCTOの竹内真さんのこの記事があります。

CTOの頭の中:技術を財務で表現する

P/LとB/Sの概念に加えて、B/Sを別軸で微分したようなG/Pという概念を取り入れ、Product ManagerとCTOそれぞれの役割をわかりやすく表現した図に感銘を受けました。

ただ一つ考え方が異なるのは、「Product ManagerとCTO、全部できる人はアーティストになってしまうし、そんなやつなかなかおらんから基本は分けて考えよう」という部分です。

おっしゃる通りではあるんですが、こと一定以上の規模の会社が本来の意味でのDXを実現しようと思ったら、もっと言えば産業構造を変革させるぐらいの市場インパクトのあるDXをやっていこうと思ったら、必ずこのアーティストの力が必要になるとぼくは思っています。

対象の事業領域におけるドメイン知識や各プレーヤーの利害関係、選択可能な技術、ローンチまでのマイルストーン設定など全ての要素が頭に入った上で、何からどう手を付けて、これができたら次これができるようになって・・・といった戦略を考えるのは、まさにアーティストにしかできない、なおかつそれがないと何も始まらない、ものすごくクリエイティブな仕事だと思っています。

※追記:そもそもDXってなんやねんという点については、「ちゃんと商売せい」「ちゃんと管理会計せい」というこちらの記事が非常にわかりやすくてオススメです。

【DMM×ALIS】気鋭のCTO2名と一緒にDXとは『なにか』を見直そう。(前編)

【DMM×ALIS】気鋭のCTO2名と一緒にDXとは『なにか』を見直そう。(後編)

クリエイティブな戦略の考え方

例えば、昔自分で曲を作ったりしていたんですが、作曲や音楽制作も近いと思っています。音楽こそクリエイティブで感性に依存するものと思われがちですが、一定部分は音楽理論に基づいて組み立てることができます。長調は楽しくてハッピー、短調は暗くてかっこいいみたいなのもそうですし、こういうコード進行を使えばこういう気持ちにさせやすい、とか、三度は気持ちいいけど二度は不安になる、とか、そういった「こうすればこうなる」という理屈が存在します。

でももちろん理屈だけでいい曲が作れるわけではなく、まっさらなキャンパスにどんな部品を置いていくかという自由度は無限大ですし、思いついたモチーフにどんな肉付けをしていくかというのも感性の赴くままです。そうやって理屈と感性を組み合わせながら、「2回目のサビで盛り上げたいからここはぐっと静かにしよう」とか、「このフレーズでキメたいからちょっと前からモチーフ小出しにしていこう」とか、どうやって聞き手の感情の振れ幅を大きくするかという戦略を立てます。もちろん音楽は自由なのでそんなこと考えずに作ってる人もいっぱいいると思いますが、少なくともぼくはそうやって考えて作るのが好きでした。

また全然違う例えで言うと、野球のキャッチャーのリードも近いと思っています。ロッテOBの里崎さんがよく「配球とリードは違う」という話をしますが(参考)、配球は「こういう組み立てをすれば一般的には抑えやすい」という机上の理論、リードはその理論に加えてその場の打者の雰囲気やピッチャーの状態、1球1球変わるゲームの状況を加味した上で、チームを勝たせるために最適な選択をするというものです。

一流投手と一流打者の対戦になると、「ここにこのボールを投げておけば大丈夫」「このボールだけ待ってれば大丈夫」というのは存在せず、いかに相手の裏をかくか、いかにそれを読むかの勝負になっていきます。場合によっては、終盤のここぞの場面で抑えるために、序盤は打たれてOKの気持ちでエサを撒くということもあります。これも、理屈と感性を組み合わせて、いかにチームを勝たせるかという戦略です。

DXも同じで、直面している課題をきちんと理解して、それを合理的に解く方法は理屈で考えながら、「これやるならここまで考えといた方がいいんちゃうか」「ここまでできたらこれと組み合わせてここも穫れるやん」みたいに、理屈と感性を掛け合わせていかにクリエイティブに戦略を立てるかというのが一番重要で、かつ最大の醍醐味だと思っています。

AIトラベルでも、法人の出張領域におけるDXプラットフォーム(AI Travel)を作っていますが、他社旅行代理店へのOEMや、検索機能のAPI提供など、初期の頃から想定して仕込んでいたものが1年2年経って活きてくるといった経験をいくつもしてきて、自分で考えて仕込んだものがハマる時というのは何ものにも代えがたい快感があります。

DXを標榜する組織のあり方

DXはそんなクリエイティブな仕事なので、言われたものを作ればよかった昔のSIerのように業務を規格化して大量採用して・・・といった進め方ではそもそも成り立ちません。そうすると、組織戦略としては、ただでさえ市場に滅多にいない稀有なアーティストを1人でも2人でも増やしていく、アーティスト集団を形成するという戦略しか取り得ないと考えています。

確かに滅多に出会わないんですが、この小さな会社でもぼくと取締役CTOの山口の2名はアーティスト的な動き方をしていて、他の取締役2名もエンジニアとしての経験こそないものの多領域にスペシャリティをもつアーティストです。アーティストとして力のある人はそもそも独立しても1人で十分稼いでいける人たちなんですが、背中を預け合える仲間として他のアーティストと一緒に仕事をして自分にないものを補い合いながら、より大きな事業を創ることに喜びを感じてもらえているからこそ、コミットし続けてくれているのではないかと思っています。

もちろん事業計画を立てる上では規格化して計算可能なKPIに落とし込む必要はありますが、ただそういったことも含めてプロダクトの頭を張れるのはあくまでアーティストであって、まず組織としてアーティスト集団を志向すること、そして個人の生存戦略としてアーティストを志向する人が1人でも増えることが重要だと思いこの記事を書きました。

「DX人材」と言うと「IT人材」と大差ないようなイメージで議論されてしまうこともありますが、IT人材は冒頭の図で言うとエンジニアリングチームに所属するエンジニアと、その上位にいるエンジニアリングマネージャーのイメージです。DX人材は、その要素も当然包含しつつ、ビジネスもわかる、PMもできる、かつクリエイティブに戦略立案ができる、そんな人に対する呼称であってほしいと願っています。

最後に宣伝

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